寺澤光介の覚醒

生え抜きの所属選手だった寺澤光介選手だったが、ここ2年で大躍進を遂げた。2022年にLD転向を決めて佐渡日本選手権2位、翌2023年の宮古島で初出場初優勝、WT世界選手権でプロライセンス獲得、同年の佐渡日本選手権で初優勝、シーズン終盤にIM WAにてIMプロデビュー13位(8:36)。2024年宮古島で二連覇。並行して挑戦していたパラガイドとして、6月はIMケアンズpro15位(8:32)を走り、翌週からパラで2レースを戦い、しかも最終戦ではバイクのパワーベストを更新するなど絶好調だ。

テラ(寺澤選手の愛称)の成長は実はチームの成長でもあった。台湾からの遠隔になったことで、役割分担がさらに明確になり、柳井コーチがトレーニングボリュームと強度管理をしながら全体進行、平松は営業など選手活動のマネジメント、そして新たにメンタルトレーナーとして森下コーチをチームに迎え入れた。元々素直な性格のテラだったけど、その分、外野に影響を受けてしまうこともあったり、視野が狭くなってしまうこともあった。自分自身で判断するケースでは本来の目的から外れてしまうこともままあった。そのハンドリングを平松と柳井コーチでやってきたのだが、選手の成長のためには過保護になりすぎてもいけないし、また平松が現場を離れたことによって柳井コーチの負担も大きくなってきたところで、森下コーチに参画していただいた。森下コーチとは週1回のメンタルトレーニングのセッションほかレース前はコミュニケーションを増やして準備を進めていった。回数を重ねるごとに効果は大きくなり、二連覇を前にした宮古島の記者会見では堂々たるインタビューを見せてくれた。この記者会見だけでも、僕らは大きな成長を感じたし、翌日のレースは大丈夫だろうと思えたのだ。そして、僕と柳井コーチの負担も軽くなり、それぞれの活動にさらに注力できるようになった。森下コーチの影響は計り知れない。

パラガイドとしての仕事を開始したのは、週30時間に及ぶトレーニング時間と回復時間を確保するためだ。テラの仕事はSUNNY FISHでのセッション指導と、Hi-RIDGEさんでのメカニックがメインだ。SUNNY FISHでのコーチとしての仕事は時間給にすれば効率が良いが、セッション数も足りないし、一方でHi-RIDGEさんでも融通をきかせてもらいながら本人の好きなメカニックのお仕事をさせてもらっている。ただ、もう週30時間のトレーニングを継続するには、回復時間が足りない。ご縁を繋いでいただき、パラガイドのお仕事をいただけることになった。これにより、トレーニングも仕事時間にカウントされることになり、大きな時間的な余裕ができた。この大きなディールが決められたのも三井住友海上の皆様をはじめ、JTUパラチーム、そしてHi-RIDGEさんのお力添え、ご理解があってこそ。本当にありがたいことだ。SUNNY FISH の会員さんも快く送り出してくれた。送り出してくださる皆んなのためにも、ガイドの仕事をすることで、「強くなる」ことが大切だった。

パラは1時間のレースとなり、アイアンマンと比べれば強度が高くなるのだが、ここに僕と柳井コーチはテラの可能性を感じていた。ここ2年間、LD転向で低強度に振っていたものを、パラガイドの仕事を使って高出力の部分を再強化することができるのではないか、という目論見だ。はじめは数字での変化はわずかだったが、体感としては成長を感じられていた。シーズンインして、パラ→ロング→パラ→ロング と繰り返すうちに明らかに数字でもパフォーマンスが向上してきた。宮古島後の横浜パラ、ケアンズ後のモントリオールパラでは明確にバイクパフォーンスが向上していた。IMケアンズの後のパラ二連戦は、各所から、大丈夫なのか?それはベストの選択なのか?とご心配いただいた。しかし、過去データを見てもIM1本走った後のリカバリーも1週間で問題ないだろうし、おそらく2戦目は良い数字になるだろう、と予測できていたのだ。「アイアンマン1本走ったくらいでは疲れるようなトレーニングはしてません」過去にそう話したプロ選手がいたが、まさにその通りと言える。一般的なアイアンマンのイメージ(一般にやられている方の体験も含め)とはかけ離れているだろう。そしてそれはSD選手を見ているコーチからもわからないことなのかもしれない。もちろん、IMケアンズを入れない方が、風邪や落車などのリスクは避けられるだろうけど、横浜後のテラの状態からして、フィジカル面のリスクは非常に少ないと判断できていた。とはいえ、レース後の免疫が下がる状態で飛行機で過ごす時間も多くなる中、風邪など体調不良もなく、無事に3連戦を終えることができ、ホッとしている。

現在は、ランキング10位で終了したため、自力でのパリパラリンピックの出場はなく、インビテーション待ちである。パリパラリンピックの有無に関わらず後半戦はやってくる。チームとしては、次はIM世界選手権出場へのチャレンジだ。日本人男子は2017年戸原選手以降、世界選手権に出場できていない。今のテラでは届かないが、もう一段レベルアップができれば可能性が出てくる。楽しみだ。

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