マルチスポーツ対策チームリーダーに就いて

昨年10月のJTU組織改変に伴い、マルチスポーツ対策チームのリーダーに就くことになった。マルチスポーツ対策チームとは、デュアスロン、アクアスロン、ロングディスタンストライアスロン、クロストライアスロン、ウィンタートライアスロンを統括する部門だ。要するにオリンピックトライアスロン以外を全部まとめてやっつけているところだ。私は、ここで長らくメンバー(委員)の一人として仕事をさせてもらっていた。私は若い時には、ずいぶんとJTUに意見ばかり(文句ばかり)言う選手だったと思う。山倉紀子さんが長を務めている頃に、意見があるなら組織の中に入って話をしなさい、とメンバーに入ったと記憶している。まだ現役選手であるのに、自分が選考されなかった世界デュアスロン選手権に監督代行マネージャーとして帯同したこともあった。中島靖弘さんが長を務めるようになり、選考基準やルールの策定に携わらせていただき、本当に多くのことを勉強させていただいた。実際に中に入ってみないとわからないことは沢山あり、声をかけていただいた山倉紀子さん、勉強させていただいた中島靖弘さんには感謝しかない。

私は選手時代にJTUへの不満や不信感を募らせていた選手の一人だった。私はSDのエリートとして競技をしていたが、目立った成績は残せず、ただカーフマンやデュアスロン日本選手権には積極的に出た。デュアスロンではアジア選手権と世界選手権ともに4回ほど出場している。強化指定選手にも選ばれていたが、特別何か支援してもらったことはなく、世界選手権も自己負担での出場(公費派遣はアジア選手権はなし、世界選手権のみ男女1-2名)で、とにかく”拗ねていた”と思う。なぜ、JTUはデュアスロン日本選手団に支援してくれないのだろう、なぜ合宿などないのだろうと一方的に不満に思っていた。中島靖弘さんが長になってから、風洞実感を使ったトレーニングや、カーブテスト、そして志賀高原での合宿が開催されたが続かなかった。のちに、予算がない中で、中島さんが色々と知恵を絞って手配してくれていたと分かり、その苦労を知る。

私を含めて多くのDU/LD選手の抱く不信感の原因は、選手と組織の「思い違い」ではないかと思う。まず着手すべきは、この不信感の払拭ではないかと。選手と組織のスタンスの違いをわかってもらって「思い違い」を解消したい。ただ、組織として文章で発表することは難しいので、こうして私的なblogで文章を書いているわけだ。(苦笑)

まず、選手が求めているのは、SDの選手たちと同じような支援体制だ。同じトライアスロン競技なのにどうして、オリンピックばかり強化の資源が集中するのか。何もしてくれていないのに、アイアンマンしか出ないのにJTU登録は求められるし、記録会にも出ないといけないし、自己負担で出ている大会での行動制限まで求められる(日本選手団として同じフライトや宿泊所を予約するよう求められたり。) 

一方でJTU側の論理としてはこうだろう。(私的な推測です。悪しからず) オリンピック競技であるトライアスロンの普及強化のために協会があり、オリンピックに紐付いた強化予算にてSDを強化している。アイアンマンやデュアスロン、それにクロスやウィンターも、世間的にみたらトライアスロンなので、窓口をしている。SDと同じ待遇を求められても困るのだが、世間から見たら、同じトライアスロン。何かあったらケツを拭くのは窓口なのだから、足並みを揃えて行動して欲しい…。

言葉が乱暴だけど、およそこのような「思い違い」なんだろう。お互いの気持ちを知っていれば、DU/LD選手も強化費が回ってこない事もわかるだろうし、足並みを揃えないといけない事も理解できるだろう。窓口があることでスポットが当たっている部分があることも理解しなくてはいけない。日本デュアスロン協会があったとして、今までのようなオペレーションができるわけではないし、予算が増えるわけではないのだ。もちろん、窓口側にも理解が必要だ。こうしたことは「伝えておかないとわからない」。なぜ、公費派遣がされないのか、合宿予算がないのか、それは説明しないとわからない。組織として、あなた達の予算はないです、理由はこうです、と言う説明の場を改めて設けることはできないだろう。だが、伝えないとわからない。伝えて理解してもらうことが大切だ。だから、これからはその方法を模索し、理解しあった上で、支援の新しい形をつくっていくことを目標にしたいと思っている。コミュニケーションが大切だよなあ。

*デュアスロンは「オリンピック候補選手の強化に必要」と言う拡大解釈をしてもらって、SDエリートを取りまとめるハイパフォーマンスチームに引き取られたので現在は直接の担当ではなくなった。が、デュアスロン競技にはトライアスリートだけでなく、泳げない生粋のデュアスリートもいるわけで、彼らの権利や主張もうまく汲み取っていけるようなフォローが必要とも感じている。